消費税増税前の駆け込み発注も落ち着き、今週はバタバタした年度末の反省と、また気持ちも新たに「何がお客様にためになるか」を考える一週間でした。当店の年明けからのキャッチフレーズは 「良いガラスに 良いエッチング 良い贈り物。」なのですが、よいガラスという定義がなかなか難しい(^^ゞ

薄いからいいのか?クリスタルだといいのか?高級ブランドのグラスだといいのか・・・。ほとんどの世の中の商品は お値段次第というのが相場でしょうが、お値段の相場関係なしに価値を高めるのが「良いエッチング」なので、例えば世界中の誰ひとりに価値がないと思われても(まあ、そんな寂しいことはないでしょうが)唯一、ご注文いただける方にさえご満足いただければ そこに価値があるというのがエッチング技術です。
エッチング技術に関するならば、何から語ればいいのか迷う位 いいたいことは山のようにあります。また「良い贈り物」も、これもお値段次第の相場ですが 工芸品にくらべて(グラスのピンキリが 100円から100万円まであるのにくらべると)、そんなに大きな差なく、また礼を逸することが一番贈り物としては落第なので、何度もチェックを重ねることで、なんとかこれもクリアしているかと思います。
「良いガラス(グラス)」に悩みは尽きません。私は昨秋からワインスクールに通い、ワイン会などにも出向く機会を得たのですが、お店で「良いグラス」に出会ったのは2~3軒でした。バーではさすがに「良いグラス」があるなあと思って見ていましたが、それでも飲み手本位のグラスではなく、お酒本位のグラスだったと思います。それでもバーのグラスは、どれも美しいなあと惚れ惚れしたものです。(ニッカウィスキーの余市工場内のグラスたちは秀逸でした)
話が反れましたが、12~3年前にお客様から「高いワイングラスにエッチングしてくれ」とご依頼を受け 当時取引させていただいているガラスメーカーさんにある一番値段の高いグラスにエッチングさせていただきました。当時のグラス代金で2万円程度だったかと思います。商品を発送して 数日後 お客様から「グラスが大きすぎる。」とお叱りのお電話をいただきました。30オンス位のワイングラスだったかと記憶しています。グラスは一流品だったのですけどね。
グラスは大きくなるほどバランスをとるのが難しいのでお値段も高めになっています。よくワイングラスで語られるのが「女性のヒールの高さとワイングラスの高さは同じ」という話です。フォーマルであるほど女性のヒールは高くなり、ワイングラスの背丈も高くなると。
ただ、ワインを普段のみなれていない方にはなかなか理解していただけない話でもあります。私のもっているワイングラスだと 満杯いれると1050ml入ります。実際には入れませんが(脚が折れそうで・・・)ワインボトルは750ml ワインをフルボトル入れるためのワイングラスではないのですよね。あくまで複雑なワインの味をまろやかにしたり、薫りをよい引き出たすためにボウルは大きいのです。
なので、私が考える「よいガラス(グラス)」とは あくまで「飲み手」本位のグラスなわけです。大きすぎず、小さすぎず、こだわりすぎず・・・そう、エッチングのよさを引き出すグラスだったりするわけです。対局にあるのが作家さんが作るグラス、世に云う「一点ものグラス」です。でも、そこにエッチングを加えることは作家さんの想いに反しますから、私どもは行いません。わたしどもが目指すのは 作家さんにとっての一点ものではなく、お客様個人に対しての一点ものという考え方。それを引き出すグラスが 私にとっての「良いガラス(グラス)」なのです。